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BEHOMAL

株式会社ベホマル

西原麻友子

ありとあらゆる人がありとあらゆるところで
CO2を回収して利用する世界を創る

今回お話をお伺いしたのは、株式会社ベホマル代表取締役社長の西原麻友子さん。 2022年、滋賀県でスタートアップとしてスタート後、第8回滋賀テックプラングランプリ「最優秀賞」を受賞。 植物由来のCO2吸収材の開発製造販売するに至った理由や今後のビジョンについてお話を聞いてきました。

得意分野を生かし、人と地球が両立できる世界を目指す

子どもの頃から環境に興味を持っていた西原さん。 社名の「ベホマル」は、趣味のテレビゲーム「ドラゴンクエスト」のように、地球と人と資源の循環、人の輪を「マル」にかけ、回復魔法をかけるように環境を回復していきたいとの思いから名付けたといいます。

前職では、電子部品用の電極材料の開発をしていました。 ものを混ぜて、機能を発見することは得意分野です。 ものを混ぜることで、何か環境に貢献できる材料ができないかなと思っていました。

しかし、環境問題について考えているはずなのに、燃えるゴミの日にはたくさんのゴミを出す日々。 ゴミ箱の中を見れば、たくさんのプラスチックゴミが入っています。 「環境にいいことをしようとしているのに、全く環境貢献できていない」と、落ち着かない気持ちを抱く西原さん。

ゴミ袋の中に入っているゴミたちが、何かに役立ってくれたら、少しでも自分の気持ちがスッキリするはず。 最初はそんなレベルです。 それから、プラスチックで何か貢献できるものが作りたいと思うように。 また、材料となるDMCの存在を知っていたことも、役立ちました。 同時に研究を進めるなかで「自分の子どもも含めて次の世代に美しい地球を残していきたい」との思いが強くなり、「今動かなきゃいけない」と、スタートアップの道を選びました。

滋賀県は製造業が多く、工業試験場に置かれているレンタルの装置も充実しています。 自分で装置を買わず、借りてスタートできることは魅力的です。 材料の特徴として、つくりやすいこともあり、西原さんも「自分でもできるのでは」と、次のトレンドを見据えて小さく動き出しました。

CO2吸脱着プラスチック“DACプラ”の循環モデル

5年前にDMCを知り、2年前にDACプラにたどりついた西原さん。 ただ、さまざまなプラスチック製品がある中、繰り返し使えるような食器などに行き着いたのは、ここ数ヶ月だといいます。

自分でも1年前の資料を見ると、「あ、しょぼいな」って思います(笑)。 批判も受けアドバイスもいただいて、どういった製品で訴求すればいいのか、ずっと悩んで右往左往しながらここまできました。 まだ具体的に製品化が決まっているわけではありませんが、1つ考えているのは、DACプラを使ったプラスチック食器です。 プラスチックが空気中のCO2だけをキャッチするようなイメージといえばわかりやすいでしょうか。 DACプラの循環型モデル 1.プラスチック食器を使って食事をおいしく食べる 2.使い終わった食器を、洗って乾燥させる 3.乾燥熱でCO2を回収 4.回収したCO2を回収で野菜を育てる →1に戻る(循環モデル) 多くの社員食堂や学食で使われている食器やお盆、トレーは、すべてプラスチック製です。 利用者が1日1食食べて、CO2を回収する。 小さな動きを回し、体験する人や場所を増やしながら広げていきたいです。

市場の隙間を狙え!逃げ戦略で見つけた独自路線

西原さんが狙っているのは、市場の隙間です。 樹脂メーカーは、良質な樹脂をつくり、樹脂をたくさん売ることが目的。 樹脂添加剤メーカーは、機能を付与する立場ですが、もともと持つ機能の向上や補完する意味での添加剤の開発が中心。 新たに別の機能を付与する開発の方向性ではありません。 一方、粉をつくる、CO2吸収剤をつくるメーカーも、粉をつくることや装置に使う方向に進んでいます。 それぞれの業界があるがゆえに、真ん中に穴が空いていた。 その真ん中に入ったのが、ベホマルでした。

私も元々は「装置」のイメージがありました。 粉を装置や分離膜というフィルムに使えないかと考えて、リサーチしてきましたが、すでにこの分野には王様のような強豪材料「ゼオライト」があるんです。 大手メーカー製造で、供給も安定していて、品質も良い。 歴史もあり値段も安価でバリエーションも豊富。絶対的にこの牙城は崩せません。 自分はここが入れないところにしかいけない。 じゃあ、ゼオライトが使えないところはどこだ?と考えて、プラスチックに行きました。 戦略的には、逃げ戦略です。

“ザ・工業製品”のゼオライトは、排気ガスなど濃い濃度のCO2を分離し、効率よく取ることに優れています。 西原さんも、CO2排出量が多いケースや効率を重視するケースなどの問い合わせに関しては、ゼオライトを紹介。 完全に住み分けができています。

プラスチック=悪ではなく、共存すべき存在

ここ数年、「プラスチック=悪」「つくるな」「使うな」といったイメージが強まった印象です。 しかし、プラスチックがなければ、ほかの環境問題が発生するなどの不都合が生じます。

たとえば、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜が入っている袋は、加工技術により、鮮度を長持ちさせているんです。 脱プラで紙にくるむと、劣化して腐るスピードが早くなり、フードロスも増えます。 私の考えは、プラスチックは悪者ではなくて共存するべき。 残すべきところは残す。 さらに残すところにも、DACプラのように環境に貢献したいいものを使っていますよというかたちでブランディングすることを目指しています。

そうすることでお互いに共存し、いい社会が築ける。 地球全体の環境とフードロス問題の解決につながる未来を描いています。

ベホマルが目指す「ユビキタスCO2回収社会」

私の最終的な目標は「ユビキタスCO2回収社会」です。 いつでもどこでも、子どもから大人、ご老人まで、性別も問わず、ありとあらゆる人がありとあらゆるところでCO2を回収して利用する、何らかの形で環境に何か貢献している社会を目指しています。 ベホマルとしても、企業の知名度を高めることが目標です。 そして地球環境、利用者、企業、すべてにおいてメリットのある「三方よし」を築きたいです。

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