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浅小井農園株式会社

関澤征史郎

農業における一番重要なこと。
それはとにかく売上をあげること。

今回お話をお伺いしたのは、滋賀県近江八幡市にある浅小井農園株式会社代表取締役社長の関澤征史郎さん。 銀行員を経て、農業の道に進み、2020年10月に事業承継した異色の経歴の持ち主です。 これまでの経歴や今後のビジョンについてお話を聞いてきました。

洋菓子店→銀行→農業

兵庫県西宮市出身、立命館大学文学部卒の関澤さん。 卒業後は銀行への就職を志望していたものの、当時は超就職氷河期でした銀行を断念し、地元の洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティ」に就職。

甘いものが好きだったこと、接客や技術が磨けると思ったことから、腹を括りました。 ケーキ屋の店長として4年勤務。 その後、念願叶って金融機関に転職することができました。

大手メガバンクで働く中で、支店の渉外課長にまで上り詰めた関澤さん。 同時に「次は副支店長、その次は支店長」と、次のキャリアが見え始めます。 しかし、同時に自分のキャリアがこれで終わってしまうことにつまらなさを感じるように。

同じ仕事をずっと続けると「これ、去年もやったよな」と思うことが積み重なってきて、ボディブローが効いてくる感じ。当時、36歳ぐらい。 40前後は、体力もあり、経験も積んできた、いわゆる脂がのった状態です。 この銀行に対して自分の人生を捧げるのか、それとも一念発起して違うことをやってみるのか。 自分にとって大きな分岐点でした。

退職し、関西に戻り就農する選択肢が浮かぶ中で、問題となったのが家族の存在です。 当時の勤務地は東京。 さらに横浜に持ち家がありました。

まずは妻に納得してもらわないと、円満に関西に帰ることはできません。 そこでプレゼン資料を5枚作成。 契約締結前交付書面を渡し、説得を始めました。

書面には、「貯金1,000万を切ったら辞めます」「またサラリーマンに戻ります」などのような形で引き際について記載。 もしも失敗したら、どんな仕事でも就く。 家族には迷惑をかけないようにするといった内容を伝え、関西に戻ることが決定しました。

ちょうど、子どもが幼稚園に入園するタイミングだったことや、自分も関西人であること、妻が滋賀県東近江市の出身ということも、決断を後押ししてくれました。 全く縁もゆかりもない土地ではなかったことは、大きいです。

事業承継成功のコツは、ビジネスとしての思考回路

銀行員時代から、週末にコッソリと農業スクールに通っていた関澤さん。 しかし、栽培技術に対しては、まだ心許ない部分も多数ありました。

私が興味を持ったのは、人間がある程度植物をコントロールできる、環境制御の栽培スタイル。 これは面白いなと。 そこで、県の就農担当者に「滋賀県で一番進んでいる、環境制御系の農家を紹介してほしい」と頼み、紹介されたのが浅小井農園でした。

関澤さんいわく、60代後半で代表取締役社長のポジションに就いている人は、事業承継したがっている確率が高いとのこと。

銀行員時代には、事業承継絡みの融資にも関わっていました。 大体、60代後半になれば、みなさん、会長、相談役、顧問といった肩書きになる。 浅小井農園の場合、当時、先代の松村さんは、まだ現役。 周りの同年代が会長などの肩書きを持つ中、ご自身も早く引退したいという思いがあったようです。 ただ、自分が就農するにあたっては、別の場所に土地を確保していました。 そのハウスも、今は、別の会社で栽培しています。

先進設備があり、従業員もいる。 この状況下での事業承継には、大きな責任が伴います。 そこで再び、5枚ぐらいのプレゼン資料をつくった関澤さん。 松村さんが認めてくれるのであれば、私に経営を承継していただけませんかという話を、居酒屋で伝えることに。

いきなり資料をドーンと出してしまったのですが、めちゃくちゃ喜んでくださったんです。 多分、早く代わりたかったということだと思います。 ただ、親子3代で農業をやっている人なら、おそらくこの案件はブレイクしていた気がします。 延々と農家を続けている家系の場合、よそものを外から入れるのは、かなり難しい。 今回は、松村さんも非農家からの新規就農者でした。 純粋にビジネスとして事業承継する、ただそれだけ。 農業の事業承継がうまくいくかどうかは、その思考に至るかどうかが重要だと思います。

「健康」を軸に、トマトとFURDIで描くストーリー

東京に暮らす銀行員が、滋賀県に移住し第三者承継。 エッジが効いていて、ストーリーとしても注目されやすいことから、関澤さんの元には、新聞やテレビなどのメディアが殺到。 さらに事業を続けるだけでなく、拡大する方向で進めている点にも注目です。

研修中から、インフラはしっかり整っている。 ただ、オペレーションが未完成だと感じていました。 その課題を埋めるのが、自分の役割なのかなと。 農業において一番重要なことは、売上を伸ばし、利益を出すことです。 まだまだ伸び代があると思い、人を投入し、色々な肥料や資材を使っています。 今は、設備投資はせず、なるべく中のオペレーションを変えることだけで、どれだけ売上を伸ばせるかという点にチャレンジしている最中です。

同時に、今、「健康」に軸を置いてスタートさせたのが女性専用パーソナルジム「FURDI(ファディー)」です。

FURDIは、ドイツ語。 意味は「For You」です。 トマトには、リコピンやGABA、ビタミンCなどの栄養素が入っている、まさに健康のかたまり。 トマトを食べて健康になる。 さらに体を動かして健康になる。 このようなストーリーで、地域の女性の健康や美容に貢献していけるような会社を目指しています。

このストーリーをすごく気に入っていると語る関澤さん。 生産者として農業に取り組むだけでなく、複合的に取り組むことで、仕事をより楽しむことができると未来を描きます。

広範囲に商売の輪が広げられる方法を考えたときに、やっぱり「健康」は、大きなキーワードだと思います。 自分も40代。 健康を気にしていかないといけない世代です。 ケーキ屋で働いていたときは、夕飯にホールケーキを食べて、まだ食べ足りなければ牛丼屋にも行きました。 でも、今はある程度健康を気にしていますし、同じ生活はできません。 特に子育てが終わった世代や自分への投資が始まる世代に「健康」という部分がマッチしてくるのかなと思います。

一般社団法人ママパスポートコミュニティの取り組みに共感した関澤さんは、代表理事の廣瀬さんにもプロジェクトに関わってもらうことに。 今、トマト農家としての事業に加え、「FURDI」の周知に注力しています。

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