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IROAWASE

株式会社いろあわせ

北川雄士

半年後何しているかわからない会社。
目の前のことをしっかりすることで未来を創る。

今回お話をお伺いしたのは、株式会社いろあわせ代表取締役の北川雄士さん。特定の事業モデルにこだわらず、人、モノ、まちの魅力を最大限に発信している会社です。 前編では、会社の事業内容や取り組む姿勢、ビジョンを語るのが苦手な理由をお届けします。

滋賀のええとこ探し。魅力の再発見。

いろあわせの事業内容は、大きく3つあります。 「採用支援」「イベントの企画運営」「ブランディング支援(デザイン)」。 北川さんによると「ひとことで言えば、滋賀のええとこ 探し」とのこと。

企業のええとこを探したら、採用のお手伝いになりました。 街のええとこを探したら、イベント企画になり、商品のええとこを探したらデザインになった。そういう意味で、魅力の再発見と言っています。 でも、今、これが答えなのかどうかもわかっていないのが正直なところです。 説明すると「っぽい」感じはありますが、あくまで後付け。この後に、ちゃんとした後付けが出てくるかもしれない。 だから、最初から考えて進んできたわけではないんです。

神戸大学卒業後、広告代理店に勤めCMの制作営業等を経験。 転職後は、人事部門やIPOに携わった後、2014年に独立した北川さん。 滋賀県へのUターン後に描いていたのは、これまでの経験を活かした仕事でした。

結果的に、採用や研修の問い合わせをいただいたり「webサイト作れる?手伝ってくれへん?」と言われたりしている中で「できることから、なんでもやりますよ」のスタンスでスタートしました。 自分の中で特化していたのは「○○×滋賀」です。 滋賀県にはいいところがいっぱいあるのに、うまく伝わっていない。 やりたいことを持っている人がいっぱいいるのに、ハマっていない気がする。そのような状況を目にする機会がありました。

提案し、相手の話を聞く。やりとりを繰り返す中で、ひとつずつ形になってきたという北川さん。 まだまだ道半ばであり、目指している先がどこなのか、自分たちにもわからない。 でも狙ってやろうとしたことは何もない。これが北川さんが語る現状です。

公的と民間。絶妙なバランスは、狙ったものではない。

いろあわせが関わるプロジェクトには、公的な色と民間の色があります。 しっかりバランスが取れている印象です。しかし、最初から「公的」「民間」を意識していたわけではないという北川さん。

最初は、企業さんしかつながりがない状態です。 一社一社企業さんの採用サイトを作らせてもらったり、採用設計などのコンサルをしたりしていました。 その中で、聞いたのが行政の取り組みの話。正直、最初は行政と仕事をするなんて考えてもいませんでした。

いろあわせにとって初めての行政の仕事は、2017年度末。2018年4月スタートの事業を、立て続けに3〜4つ請け負うことになりました。 ジョブパークや滋賀移住計画・移住体験実施など、すべてはこの4年間の間に形になったことばかりです。

僕は、滋賀県にUターンした時点で、どうせなら自分がいる場所が面白くなればいいと思っていました。 最初は、行政に仕事があることも知らなかった。 でも、見てみたら「これ、めっちゃ自分がやりたいことに近いやつちゃうん?」と思ったんです。

県や市のリクエストを形にすることが、地域を盛り上げることにつながる。 予算をつけてもらうことで、仕事として動くことができて、雇用が作れる。ひとつの循環の形です。

会社としても利益を出す。そして、行政のみなさんやサービスを受ける市民のみなさんが喜んでくれるような企画を出す。 これが実現できれば、誰も損をすることはありません。 会社を設立して、今年で7年。最初の3年間は、1mmも考えていなかった。 すべてこの4年間、実際に取り組みながら学んだことです。

会社は設立したものの、最初の3年間は、東京や大阪のお客さまを相手にすることが多かった北川さん。 「滋賀県」というキーワードも形になっていなかったため、毎週出張する日々が続きます。

毎朝6時半の電車に乗って、彦根から大阪に向かっていた3年目にふと「俺、一体何のために引っ越してきたんやったっけ?」と、思ったときもありましたね。

その後、滋賀県内の企業との接点を持つことが増え、行政とのつながりが誕生。 その結果、行政を経由して、また新たな企業と出会う。新しい流れが生まれていきます。

今自分達ができることに対して、本気でコツコツ取り組む

「夢を描くことがシンプルに苦手。事業計画も作れない」と笑う北川さん。 北川さんに対して、「まずはビジョンを語ろう」「俺のゴールはコレだ。ついてこい!」と話すイメージを抱いている人も多そうですが、本人としてはどう思っているのでしょう。

確かに、夢を語ってそうだと言われます。 でも、5年後のビジョンと言われても、正直、社会がどうなっているか分からない。 それよりも目の前のことを、ちゃんとやっていくことの方が大事というタイプ。 社員にも「うちは半年後、何をやっている会社か分からないから」と伝えています。

前職では、社員10人くらいの会社が上場し、250人規模になるまでの経緯を見てきた北川さん。 ビジョンを描き、売り上げ目標を見据え、成長を遂げた企業です。

人事の立場として見ていると、経営陣も社員も、すごく頑張っていることが伝わってきました。 でも、達成したらどうなるのか、その先が見えてこなかった。 資本主義には、頑張って努力して成長することや会社が大きくなることに対し、NOと言いにくい雰囲気があると感じています。 でも大きくなったその先の理想を語れる人って、実はいないんじゃないかなって。

会社を大きくするためには、効率化した仕組みづくりが必要です。 しかし、その分、人情味が下がる、ストーリーが減ってしまうといったことが起きやすくなります。

「自分がやりたいこととは?豊かとは?」と考え始めて、会社を退職し、「滋賀」という場所を選んだ自分がいます。 だから今も、ビジョンや成長側へのアクセルを踏むことに対して、意図的に引いている自分がいるかも知れません。 そっちを選ぶなら、結局東京に行けばいいと思ってしまうから。

上場がすべての正解、答えではないとの考え方を持ちつつも、上場自体を否定するわけではないと語る北川さん。

上場したことで「すごく幸せ、すごくよかった」と感じている社員もいると思います。 ただ、少なくとも僕にとっては、ひとつの目指す形ではなかった。ただ、それだけです。

2022年、飲食事業「conecone .」をスタート。

2022年6月22日、彦根市の四番街スクエア内に開店した「conecone.」。北川さんが飲食業を始めるのは、かなり意外でした。

現在の店長が前に勤めていたお店を、僕が純粋に好きだったんです。 腕もよく、すごくおいしいケーキのファンということもあり、閉店が残念でした。その腕を活かして、滋賀・彦根で引き続き働いてもらえるような環境をつくりたいと思ったことがひとつめの理由です。 もうひとつの理由は、まだ構想段階。妄想段階の話として聞いてもらえるならば、彦根の魅力再発見、発信につながるだろうと思って取り組んでいます。

これまでのいろあわせは、企業や行政の裏方として企画、デザインを担当していました。いわゆるサポート側です。

自分たちでリスクをとり、主体者になるからこそ言えることもある。だから、その中のひとつになれたらと。それが彦根の魅力、滋賀の魅力になってくれればいいかなと。 彦根に来たら「絶対conecone.に行ったほうがいい」と言われるようなおいしい何かを提供する。これも魅力発信につながります。

飽きないように考え続ける。トライ&エラー&エラー&トライ。

前半の締めとして、5年後のビジョンを質問するケースが多いですが、北川さんいわく、半年後の予想も難しいとのこと。しかも表向きの発言ではなく、心の底からの本音。

マジな話で言うと、一番古株の男性スタッフにお子さんが生まれたんです。 その彼が、1年間、男性育児休暇をとることになりました。喜ばしいし、その選択をする彼の判断を尊重してあげたい。 じゃあ、会社として何を考えるかといえば、仕事の進め方です。めちゃくちゃ頼りにしている人が1年いない。物理的な無理が絶対出てくるから、変えざるをえない。これが直近に起こる話です。 こんな風に考えなければいけないことは、いっぱい出てくるわけです。だから、半年後には、今の取り組みを手放し、新しいことを始めているかもしれません。 なんだか楽しいじゃないですか。商売、商い。 飽きないように考え続けて、トライ&エラー&エラー&トライみたいなことをしていけたらいいなって。レゴブロックみたいなオモチャを与えてもらっている感じです。

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