EUGLENA Co.,Ltd.
株式会社ユーグレナ
出雲充
絶対の正解にこだわらない。
出雲社長が語る、
事業のピボットとエコシステム
前編に引き続き、株式会社ユーグレナ代表取締役社長の出雲充さんにお話を伺いました。
事業をピボットするタイミング、目安
起業家にとってピボットするかどうかの判断基準は、難しいものです。 スピーディーに変えるか、最初の1社の出会いを探した上でピボットするのか。 事業によりどちらが良いか、一概には言えない部分ではあるものの、出雲社長の中での判断基準や目安があれば、教えていただきたいです。
事業の構造と、例えば研究開発、R&Dにどれくらい時間がかかっているのか。 これがひとつの目安になります。 僕はITやソフトウェアなどのサービスに関しては、本当に詳しくありませんから、その世界のことはよくわかりません。 ただ、例えばミドリムシも、最初の研究がスタートして、形になるまでに25年かかっています。 研究開発に25年。大変でしたが、ようやく社会実装がスタートした。 そして、2年、500社に営業し、全滅しました。もし、ここで諦めてしまうと、スパンがあまりかみ合ってないわけです。
これはミドリムシに限った話ではありません。 例えばCFRP、炭素繊維強化プラスチック、カーボン素材なども、元々は釣りの部品からスタートしています。 東レが基礎的な研究開発を始め、飛行機、ボーイングの構造体に使われるようになるまで、25年かかったそう。
研究開発に10年、20年かかるフィールなら、営業も、簡単にへこたれていちゃダメですよね。 ただ、企業のR&Dは、すごく面白いです。 半年くらいで結果を出さなきゃいけない研究開発もあれば、例えば10年、20年かけて大学で研究するものもあります。 ピボットに対して、ひとつの判断基準になるのは、新商品・新サービスの投入に対し、どれくらいの時間がかかるのか、どれくらいのスパンで考えたらいいのかということ。 一概に「ミドリムシにずっとこだわり続けなさい」「ピボットしちゃダメです」という言葉を真に受けないでほしいと思っています。
ビジネスのフィールドごとにキャッシュプランを分ける
出雲社長の事業の場合、キャッシュポイントや、投資家やVCから投資を受けるケースも、IT業界とは全く様子が異なる印象を受けます。実際のところはどうなのでしょうか。
R&Dが先を見据えた足の長いものである場合、社会実装や最初の商品を買ってくださるお客さまを見つけるまでに、相当時間がかかります。 だから、できるだけ多めに資金を調達する。 そして、数年売り上げがゼロだとしても、会社が潰れないような財務プラン、ファイナンスプランにしなければいけません。 まずは、いろいろな方法を試し、ユーザーが爆発的に増える方法を探す。 見つかったら、そこにドーンと投資し、会員数を一気に100万人まで拡大する。 ビジネスのフィールドによって、ファイナンスプランも分けて考える必要がある。 だからこそ、僕は「絶対の正解」にこだわらないことが大事だと思っています。
最も失敗している人が、最も価値がある人
起業家は「最短ルート、最短の方法で進みたい」と思うもの。 そして「出雲社長だけが知っている秘訣があるんじゃないか」と考えがちです。 ただ、正解は人によって違います。だからこそ、いろいろな失敗をしていくことが重要になっていくのでしょう。
たくさん失敗している人は、価値があるんです。 ひとつのフィールドにおいては、たくさん失敗している人が、正解に近い。 あまりチャレンジせず、失敗していない人が、ショートカットしようとしても、自分のフィールドと全く関係ない事例を参考にしてしまう。 その結果、うまくいかないってことになっちゃうんじゃないかと思いますね。
スタートアップ50社の自治体。エコシステム誕生。
「up stream」には、地方から東京に出る。 東京で活躍し、大きくなって帰ってくる意味を込めています。 出雲社長が考える「地方とスタートアップ」についてお聞かせください。
日本には、約1700の自治体があります。 全てがベンチャー、スタートアップと言い出すのも、ちょっとおかしな話ですよね。 でも、もし、本気でスタートアップエコシステムをつくろうと思ったら、実現は可能です。 その方法は、スタートアップを50社つくること。50社つくった自治体は、スタートアップエコシステムの生態系が生まれます。
大学発ベンチャーの数が、3306社。 その中でIPOなど上場を果たした大学発スタートアップが64社。 このデータからは「大学発ベンチャーは、50社つくると1社大成功する」と読み取れます。
50社の中から、エグジットを果たし、IPOを果たすような、大成功の1社をつくることができれば、そのベンチャーが核となります。 大学、地域のアントレプレナーが生まれ「先輩みたいになりたい」「お兄さん、お姉さんのような人になりたい」と思う若者が、どんどんベンチャーをやるようになる。 その結果、大学や地域に強靭なエコシステムが生まれます。 次の第二世代、スタートアップアントレプレナーが動きやすい環境を整備することで、好循環をさらに加速させることができるでしょう。 守山市も、スタートアップエコシステムをつくってほしいです。
強靭なエコシステムが生まれることで、放っておいても、スタートアップが生まれる自治体になることが想定されます。 すでに、守山市を含め他の自治体でも、何ヵ所か行動に移し始めているそう。
まずは50社、スタートアップをつくることが重要です。 その結果、「スタートアップをやってみよう」と考える若者は、その地域、中間拠点にどんどん集まっていくことになると思います。