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MORIYAMA

守山市役所

宮本市長

平成29年ごろから動き出した
「起業家のあつまるまち守山」構想

今回お話をお伺いしたのは、守山市の宮本市長。「起業家の集まるまち守山」が始まった経緯や現状、描くビジョンについてお話を聞いてきました。

平成29年ごろから動き出した「起業家のあつまるまち守山」構想

京阪神のベッドタウンとして人口増加傾向にあり、市内に中高一貫校もある守山市。 しかし、市内には大学がありません。高校卒業後、市外に進学し、そのまま就職するケースも多い中、市長自身が感じたことがありました。

大切な子どもたちが、まちに戻ってこないのは、とても残念です。 その中で「将来起業するなら守山で」「将来働くなら守山で」、そして守山市出身の方ではなくても「守山で起業したい」と思うまちを目指したいと考えました。

平成30年11月、リニューアルした守山市立図書館が開館。 単なる建て替えではなく、起業・創業を支援するロビーエリアなど、今後を見据えた取り組みが多数。オープン当日には、株式会社マイネットの上原仁社長が来館。基調講演が行われました。 上原さんを招いたのは、守山市の起業家がゆるやかに集まるグループ「En-teras MORIYAMA」でした。

こんなにいろいろな起業家がいたのかと、正直びっくりしました。 同時に、守山市の「起業家の集まるまち」としてのポテンシャルについても改めて感じました。 その後の懇親会では、上原さんを核にして「多くの起業家が集まるまちをつくっていこう」と、「プロジェクト仁」の機運が盛り上がりましたね。 交流し連携することで、社会問題や地域課題の解決もできるんじゃないか。描いたのは、将来的に多くのスタートアップ企業がどんどん守山に来るような未来です。

そこからスタートした守山市での起業家プロジェクト。 まず市長が行ったのは知識を取得するためにある番組をネットフリックスで見ることだったといいます。

起業家をつくるまち≠起業家の集まるまち

起業経験のない宮本市長が、起業家を知るための題材として選んだのが韓国ドラマ「スタートアップ  夢の扉」。 最初は専門用語がよくわからなかったものの、何度も見ることで、全体像や支援方法が理解できるように。

ドラマとしても楽しめましたが、特にいいなと思ったのは「サンドボックス」です。 子どもが安全に遊べる砂場をイメージした、失敗しても大丈夫な起業インキュベーション施設。 起業家は、リスクを背負っています。例え失敗しても支えられるような、サンドボックスのようなまち。 将来的には色々な関係機関と連携して、そういう施設ができたら面白い。 すごく先の目標ですけどね。

守山市が目指しているのは「起業家をつくる」ではなく「起業家が集まる」まち。 市だけで完結して考えるのではなく、守山市を中心に企業が集まり交流が生まれ化学反応が起きることへの期待を感じます。

「起業家の集まるまち守山」には、交流の場、コミュニティの場になればいいなとの思いがあります。

当初は抽象的でしたが、こんなまちをつくりたいとの概念を伝えていったのが担当課の職員でした。。 どんどん外部と繋がっていき、そのネットワークを活かし、情報収集をしながら「どうすれば起業家が集まるまちになっていくのか」を考えてくれました。 その担当課があったからこそ、ここまで進められたと思います。

官民で走り出した起業家プロジェクト。 実際にそのプロジェクトの中で、現在三本の柱になっている事業があります。

守山市が掲げる起業支援の3つの柱

1つ目の柱「守山で育つ子どもたちが起業家マインド・挑戦する心を養う」

令和元年度から市内小中学校と連携し、職業講和を実施しました。

起業家の講和を通じて「地元で面白い仕事をつくることができる」「人と人がつながると、地域で楽しい仕事ができる」ことを子どもたちに伝える取り組みです。 また市内在住の中高生が、社会で活躍する起業家・投資家・専門家に向けてビジネスプランをプレゼンする「びわ湖ピッチ」。

「旭化成賞」「コカ・コーラ賞」「平和堂賞」など、地元企業からの協賛もあり、こちらは合計2回開催。

マイネットの上原社長が自ら壁打ち相手になると申し出てくれました。 「Why you」「Why now」「Why this」を常に問いなさいという話も、学生にとって良い刺激だったと思います。 メンターとしてのフォローがある中で、学生たちも高いレベルの提案をしてくれました。 挑戦心、好奇心旺盛な中高生時代に、大人の考えに触れ、大人の指導を受ける。 この経験から、より一層起業を目指す支援ができればと思っています。

2つ目の柱「起業家を支える環境づくり」

起業家を支えるためには、市役所や商工会議所、金融機関はもちろん、行政書士や司法書士、弁護士など士業の方々の支援も必要です。

しかし、支援者側と起業家が求めている情報とのミスマッチが起きやすいといった問題がありました。 守山市では、これまでに地域未来ミーティング(共催:財務省近畿財務局大津財務事務所)を3回開催しています。

起業家が何を考えているのか、そして、そのために支える側は何が必要かを考えるミーティングです。

各金融機関から「金融機関の垣根を越えて、起業家をしっかり支えていきたい」との言葉が出たことがとても嬉しかったですね。

3つ目の柱「起業家への現実的な支援」

令和3年度には、地域活性化につなげる目的でクラウドファンディングを活用した資金調達に関し、県下初「クラウドファンディングの対象経費の支援」を実施。

子どもたちにとっての大人とは、親や学校の先生など、自分がつながりのある大人に限られます。 しかし、起業家や社長と出会うことで、全く違う方向から自分の将来を想像することができるようになります。 もう1個、新しい道を探すことができる。しかも、どこか遠くではなくて、生まれ育った守山で自分達が未来をつくる。 ゼロからイチ、子どもたちに新しい気づきを与える仕掛けがここにありました。

主役は民間・個人、行政はバックアップ・裏方

起業家を集めるため「起業家を支える環境づくり」「起業家への現実的な支援」といったバックアップに力を入れている守山市。 あくまで主人公は起業家であり、行政ではないとの立ち位置が明確です。 「話を聞いてくれる」部分が見えることで、起業の有無は別として「つなげっておきたい」「行ってみたい」と思わせる力があります。

今は、さまざまな自治体が地方創生に取り組んでいますが、守山市の場合は「民間、個人が主役、主体」「行政はバックアップ、裏方」との考えがあります。

道筋やステージを作るのは行政の役割。活躍は民間や個人の力。 その考えのもと、担当課が色々考えて仕掛けを作ってくれたから、今があります。

その象徴とも言えるのが、コワーキングスペース。 守山市には民間主体のコワーキングスペースが4ヶ所(2022年3月時点)。他の自治体では、行政がつくるケースも増えていますが、現段階で守山市として作る計画はありません。

起業家が求めていることを、行政がビビッドに理解することは難しいと思います。

むしろ枠組みにはめてしまって、使いづらくなる可能性もある。うちの基本は、民間さんにやっていただくこと。その象徴が4ヶ所の民間コワーキングスペースだと思っています。

人口10万人規模のまちで、行政が運営していない。 かつ、4ヶ所ものコワーキングスペースがあるのはかなりレアなケース。 発信と実際の支援の両方が充実している点も含めて後編ではさらに1000人というキーワードを中心にお話をお伺いしていきます。

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