今回お話をお伺いしたのは、株式会社U.C.T.corporation代表取締役社長の増村匡人さん。
滋賀県のオシャレカフェ、おいしい紅茶が飲めるお店「SPOON」の創業者であり、「社会起業家」としての面を持つ方です。
前編では、起業に至るまでの経緯や、環境問題に関心を持つようになったきっかけ、今後のビジョンについてお届けします。
欲しかったのは先駆者特権。26歳でカフェをオープン。
26歳のとき、カフェ「SPOON」をスタートさせた増村さん。
高校時代から服や家具に興味があり、自分で家具をつくり、インテリアコンテストに出品したことも。
学生時代から抱いていたのは、家具や食器を購入できるコンセプトカフェをつくりたいとの思い。
就職先は、家具屋か銀行で悩みました。
銀行なら、お金の知識が得られるかなと。
とある人から「求めている情報を全部カバーしようと思ったら、不動産屋がいい」と教えてもらい、新卒で不動産屋に入りました。

そして、入社から1年半後に退社。
起業当時の滋賀県には、まだ「カフェ文化」自体が、ほとんどない時代。
だからこそ「最初にカフェをつくったら勝ち」だと思ったそう。
欲しかったのは、先駆者特権。
例えば「日本で一番高い山は?」と質問されたら、多くの人が答えられるでしょう。
でも「二番目は?」と言われたらどうでしょうか。おそらく山梨県の人は「北岳」だと答えられる。
ただ、富士山と比べると北岳の知名度は低いです。
同じように、「滋賀県でカフェといえばSPOON」だと言われるために、1年1店舗、10年で10店舗を目指して走り続けてきました。

現在、増村さんが代表を務める「株式会社U.C.T.corporation」(以下、U.C.T)は、ムレスナティーの販売代理店です。
ムレスナティーと契約したのは、「SPOON守山店」を始めた頃。
僕は、紅茶オタクです。
これまで「おいしい紅茶が飲める店に行こう」と言われても、あまり期待していませんでした。
でも、ムレスナティーのお店は、気持ちに応えてくれるお店が多かった。
野洲店の頃は、ポットでのティーサービスをしていました。
守山店の頃から、全員、好きなだけ紅茶を飲んでもらえるようにと、紅茶の飲み放題サービスを始めています。

U.C.T設立は、SPOON開店から8年目頃。
ムレスナティーの日本の総代理店「ムレスナジャパン」社長から「僕が輸入する。君は日本で拡げてくれないか」と言われたことで代理店契約。
スプーン紅茶事業部の誕生です。
ユニバーサルコンセプトティーコーポレーションの社名に込められているのは、どこでも当たり前に、おいしい紅茶が飲めること。
これは、会社のコンセプトでもあります。
SDGs発信拠点「Future lab」。社会起業家を目指すDNA。
増村さんには「SPOON」創業者というイメージに加え「SDGsの人」「社会起業家」の側面もあります。
SDGs発信拠点「Future lab」もそのひとつ。
環境問題について、考えるようになったのは子どもの頃の経験も大きいといいます。
増村家では、母親が熱心にボランティア活動に参加していました。
空き缶プルトップやベルマークの収集、廃油の回収、びわ湖のせっけん運動など。
近所の人も、家に廃油などを持ってきてくれていました。僕も土日はお手伝いしたり、活動に参加したり。
「みんなが平和に暮らせるように」「地球環境がよくあってほしい」という考え方が、DNAに組み込まれていると思います。

起業当時の「SPOON」のテーマは、カフェという名の情報発信基地。
環境、食育のイベント・共有を続けてきたこともあり、流れは必然といえます。
「Future lab」誕生のきっかけは、「SPOON」で開催していたSDGsのカードゲームです。
参加者の高校生が「自分たちは、一体何のために勉強しているのか。例えば、文系、理系、学部選びなどの選択が、社会とどのようにつながっているのかわからない」と話してくれました。
起業家、テックベンチャーの社長を呼んで、学生向けに発信してもらいたい。
その思いから、生まれたのが、「株式会社earthkiss」です。

教育の選択肢を拡げ、社会課題解決を目指す。
2022年に、46歳を迎える増村さん。自らを「現実主義者」と分析。
例えば、今から自分がテックベンチャーで起業することは、現実的ではないといいます。
不可能なことではないけれど、それならば若い子たちに託したい、と。
そんな増村さんに、5年後、目指すビジョンについてたずねてみました。
自分で過去を振り返ると「このとき、こういう選択をしていれば」と思うことが、めちゃくちゃたくさんありました。
ただ、当時はインターネットを使って、自分で情報を探せる時代でもない。
親や学校の先生の知識に頼る方法しかありませんでした。
でも、時代は変わりました。
日本でも、里山留学、家で勉強する「ホーム留学」があり、ネットで十分授業を受けることができます。
教育システムとしても「国際バカロレア」「インド式インターナショナルスクール」「シュタイナー教育」など、学校教育以外にも、子どもに合った教育がたくさんあります。
ただ、残念ながら、親世代が知らない。
人間には、知らないものを拒絶する習性があります。
だからこそ、お父さん、お母さんに知ってもらう機会をつくりたい。
例えば、教育の選択を拡げるシンポジウムのような、子どもたちの可能性を拡げる仕事をしていきたいと思っています。

増村さん自身も、現在子育て中。
そのため、自分の子どもを通して、親として勉強しながら、実業家としても、自身の経験をもとに語れる強みがあります。
現在の学校教育を否定しているわけではありません。
均一の教育システムだからこそできる、良い面もあります。
ただ、僕自身、小学生のときに知っていたら、と思うことがたくさんある。
だからこそ、僕のような学校教育にあぶれてしまったタイプの子どもにも、可能性を拡げてあげたいと思います。
そして、社会課題を解決したい。
例えば、今、再生ペットボトルの開発が進んでいますが、そのような形で、次世代に向けた新しい技術、開発を進める子どもたちを応援するための方法を模索しています。

前編では株式会社U.C.T.corporation成り立ちや事業内容についてお伺いしました。
後編では増村さんを深掘りしてお話を伺います。