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IMPACT LAB

一般社団法人インパクトラボ

上田隼也

将来、自分たちが
「誇れる仕事をしよう」
プロジェクトが拡張する
チームマネジメント

前編に引き続き、一般社団法人インパクトラボ代表理事の上田隼也さんにお話を伺いました。

後編では、民間が自治体や大学などと事業を進めるハウツーや注意点、 チームで動くメリットをお届けします。

自治体、大学との事業連携ハウツー

基本的に自治体、大学は実績重視です。

ただ、守山市でうまくいった取り組みをコピーしてそのまま草津市や大津市に持ち込んでも、地域への価値は高くありません。 成功事例の中で、コピーできるものとコピーできないもの、 その地域が持つ「価値」を早く見定めることが大切。その準備ができてから自治体などに提案しています。 絶対に同じコピーはしません。だから手間がかかります。

自治体の方との入口の段階では、「立命館の人」としてできるだけ会うという上田さん。

最初からある程度信頼してもらい仲良くなり、相手が求めているものを見た上で、後日連絡するようにしています。

例えば滋賀県庁など、「インパクトラボ」のことを知ってもらっているところは、話が早いです。

ただ、初めての自治体であれば「インパクトラボの人」という行き方は、わざとしていません。 「立命館でSDGsなどに取り組んでいます」のような入り方をした方が、信用も含めて、ウケがいいので。

相手が信頼しやすいキーワードを先に出し、信用を得てから内容を説明。

過去の実績をうまく整理して、その自治体に新しい価値を提供していきます。

私たちが自治体と一緒にやった取り組みは、立命館にできるだけ還元される可能性があります。

研究としてラボとして、立命館側にメリットがあるなら、還元して次の事業を作ることができます。 そのためのハブのような立ち位置を目指しています。

在学中に起業した上田さん。その手法は一体どこで学んだのでしょうか。

大学で学んだことが大きいですね。

大学の先生は、基本的に個人事業主っぽいです。 立命館大学は規模が大きいため、先生の数も多いです。 一方、大学の職員さんは、いわゆる自治体のように組織的に動かれます。 このふたつがハイブリットしているのが大学。 だから、起業家の個人としての動きも、自治体のような組織としての動きも、両方一度に学ぶことができました。

学生時代には、新しいことを始める際に、

企画書をさまざまな部署に持っていくことに対し、手間と時間がかかると感じていた上田さん。 しかし、その中で大人の世界はちゃんと組織的になっていて、1つ1つのゲートをくぐるかのように企画が通ることに気づいたそう。

学生ながらにも「最初にこの先生に話を通した方がいい」など、

仕組みがわかってきました。このノウハウは、今も生きています。

事業を進める上での注意点。心がけていること

インパクトラボの事業においては、

後から見返した際にプロセスを確認できるよう、全てを記録。 レポートや写真に加え、時には映像をつくることも。 これは、自治体では成果に加えてプロセスも重要視されるため。

自治体側から「プロセスも記録しておいて」と求められることはありません。

なぜやるのかと言われれば、僕たちにとっても資産になるからです。 これを見た他の自治体の方、他の大学の先生が連絡してくれることもあれば、全く異なるカタチでの提案に使うこともあります。 全てがストックできる、大切な資産です。

もうひとつ意識しているのは、引き際。

「うまみがない、ヤバい」と思ったら、上田さん自身の判断で撤退を決定。

僕が決めないと、みんながダラダラ進んでしまう。

担当者の方とはきちんと話をした上で、組織メンバー全員で、ビジネスとしてやり遂げます。 言葉はあまり良くないですが、中には負け戦もあります。 付加価値が生めないものは、基本的に負け戦です。 チーム全員で意思疎通の上、淡々とこなし、淡々と執行して事業を終わらせます。

チームとして動く良さは、プロジェクトが拡張すること。

滋賀県内で上田さんのような立ち回りの方は、

個人で事業を進めるタイプが多い印象があります。 チームで動く良さは、どこにあるのでしょうか。

みんなが成長し、どんどんプロジェクトが拡張していくことです。

さまざまなパターンに対し、多様にチームを組むことができます。 1人なら3つしかできない事業が、チームを組むことで一気に5個、6個と可能になる。 僕はチームでやることにこだわっているため、1人でやることは、ほぼありません。

誰と誰を入れるか、そのチームの組み方に自信があるという上田さん。

その特技に気付いたのは大学時代。 東大、京大、海外の大学生との接点を持ち、いろいろ話す中で、 組織力、マネジメント、チームリーディングの強みを自覚したそう。

海外の大学だと、個人プレーでバリバリやっていく。

でも、僕たちは日本人で日本の大学に通っています。 僕は、その日本人特有さを生かした組織を作ることが得意。 日本の中でも負けないとの自負があり、チームでやろうというスタンスになりました。

ちなみにコマースも、全てチームで動いています。

うまくいっている理由を研究し、より良いチームを目指し続けます。 重視しているのは、能力よりもカルチャー。 「インパクトラボっぽい人ってどんな人だろう?」という点を常に考え、リクルートしているそう。

過去には、能力を期待して採用したこともあります。

でも、その能力が僕たちの組織で生かされず、くすぶってしまうパターンが多かった。 これは、お互いにとってデメリット。 それからは「インパクトラボらしい人」という雰囲気をつくって当てはまる人を探しています。

勝ち戦モデルとチャンスを待つ冷静さ

負け戦があるならば、勝ち戦もある。

インパクトラボの勝ち戦とは「他の自治体が見て、自分たちもやりたい」との声が上がったモデル。

たとえば「もりやまキャリアチャレンジ」の事業内容を見て、

文科省など別のところから「ちょっと教えてほしい」との声があがるケースです。 確実に拡張性があり、周りの人たちが興味を持ってくれた。 これは、僕たちがやるべきことをやっているなと思える点です。

一方、負け戦に気づくのは途中からであることが多いそう。

ミルフィーユのようなイメージで、何レイヤーも一気に仕事をこなしていく中、 全てに100%の力を注ぐのは困難です。 70%にトーンダウンさせることもあれば、逆に120%になることも。

120%の見極めを言葉にするのは、かなり難しいです。

世の中の流れに左右されます。 教育的な事業の場合、偶然スーパースターのような生徒が出てきて、 大活躍してくれることで後から「すごかったね」と言われるケースは多いです。いわゆる、はねるケースですね。 変動性が高い事業を一気に同時に操っている状態ですが、 僕1人の力ではどうにもならないところがあります。 運に任せ、タイミングを待つ。 どのタイミングで来るかわからない分、冷静に見ながらチャンスを待っています。

将来、自分たちが誇れる仕事をしよう。

最近のインパクトラボの合言葉は「10年先、自分たちが誇れる仕事をしよう」。

例えば、10人中9人が「これ、意味がわからない」と言っている事業。

でも僕だけ手を出して、3年後に市場規模や自治体であれば予算が10倍、20倍になる。その事業を周りが真似をし始めたなど。 これは、僕たちに先見の明があったということ。 そういう意味で、10年先に誇れる仕事かどうかは、みんなの中で合言葉になっています。

理論上は納得ですが、仮に上田チームが10人とします。

上田さん以外の9人が「なんでこんな仕事をやるの?」と思っている状態でのマネジメントは、かなり難しいように思います。

だから、チームの配置は、ものすごく考えています。

僕は、ヤバい案件が得意。エマージェンシー、緊急事態が大好きな性格です。 だから、緊急事態が好きな人と、安定的な成長が好きな人をちゃんと見極めるようにしています。 その上で、チームの中に混ぜ込む。 緊急事態が好きな人は、絶対に必要。 でも、そういう人ばかりだと、会社として、ビジネスとしては安定しません。 「何事もないことが、いいこと」だとわかっている人が必要。経験的に6:4の割合で、 組織やチームをマネジメントしています。

緊急事態に活躍する人、平和で安定した環境のもとで力を発揮できる人。

どうすればそれぞれのタイプを見極め、自分のチームに入れることができるのでしょうか。

僕は、今、高校生の授業を担当しているのですが、そこで目利き力を磨いています。

お金が介在すると、お金で動く人はいっぱいいます。 でも、高校生は、なかなかお金では動かない。 高校生相手に鍛えた目利き力で大人に応用すれば、大体わかる気がします。 この人は多分、給料半分になってもやりそうな人だなとか、お金がないと動かないなとか。 自分の目利き力を信じています。 あとは、事業、インパクトラボ、コマースをやっていく中で、段々見えてきた部分も大きいです。 一緒に仕事をする方や周りの皆さんのモチベーションも、ちょっとずつ見抜いてこれるようになりました。 今後さらにノウハウ化して、数年後には本も出版しようかなと思っています。

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