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ENRARGE

株式会社enRarge

清水天斗

「eSports×教育 」
「enRarge」が目指す未来とは

今回お話をお伺いしたのは、滋賀県で「eスポーツ×教育」を掲げる、 株式会社enRargeの代表取締役と滋賀県eスポーツ協会の副理事を務める清水天斗さん。 起業の経緯やeスポーツを事業として成り立たせる方法、5年後のビジョンについてお伝えします。

美容師からeスポーツでの起業の道へ

山口県出身の清水さんは、進学を機に大阪へ。 子どもの頃は都会への憧れがあったものの、いざ住んでみると「あまり都会が好きではない」ことを自覚。 大阪に住んでいても、外に出ることは少なく、ゲーム好きということもありゲーム三昧の日々。

美容師として働きつつ、プライベートでは、7年前、20歳ぐらいから、 ゲーム関係で滋賀や京都に足を運んでいました。 アニメも好きで、『けいおん!』の聖地である豊郷町にも何回も来ています。 そんな中、滋賀県がすごく山口県に似ていることに気づいたんです。 特に、びわ湖沿いを走る電車から見る風景。僕の地元では、瀬戸内海沿いを電車が走っているので。

滋賀県に行き、ゲーム以外の時間を過ごすことも徐々に増え始めた清水さん。 転機が訪れたのは、2020年です。 新型コロナウイルス感染症拡大により、当時働いていた美容院で働き続けることが困難に。そして退職。

退職後は、自分がしたいことを考えました。 学生の頃から、僕はゲーム、eスポーツが好き。そして子どもが好き。ゲームとeスポーツで何かできたら面白い。 最初は仕事として働ける場所を探しましたが、そんなに都合よくは見つからない。 じゃあ、自分で会社をつくった方が早いな、と。

清水さんがやりたい分野と地方創生という部分は、かなり相性が良さそうです。 「滋賀県で会社をつくろう。そして、eスポーツと教育で地方創生の部分で取り組んでみよう」と動き出したenRarge。 山口と滋賀の2拠点を視野に入れる、境遇が似ている滋賀で経験値を増やすといった意識はあるのでしょうか。

現状、山口県に帰るつもりは一切ありません。 今も、仕事として京都や福岡など他府県のeスポーツのチームから、地方創生の案件を受けることはあります。 だから、山口県から案件を受けたいなという気持ちがちょっとあるぐらいです。

ここ数年で一般の方の認知度も高まっているeスポーツ。 しかし、日本の場合、東京や大阪といった大都市でのイベント、参加人口が多い印象を受けます。 滋賀県草津市で会社を立ち上げた理由はどこにあるのでしょうか。

草津市を選んだ一番の理由は、立命館大学が近いからです。 実際の関わりというより、地域との関係をつくりやすいのは、大学のサークルだと思っていたから。 eスポーツ関係のサークルが増えている中、最初に地域と密着した関係値をつくるときの連携場所として草津という場所を選びました。

最初はスポンサーが取れるかどうか、全くわからない状態からのスタート。 しかし、今では彦根市にある滋賀県立河瀬中学校・高等学校のeスポーツイベントにゲスト出演するなど、 滋賀県のeスポーツイベントで名前を見る機会も増えています。

株式会社enRarge設立、最初から法人化した理由

2020年10月、株式会社enRargeを設立。 メイン事業は、滋賀県初のプロeスポーツチーム「LAKE GAMING」の運営です。 主なキャッシュポイントは、スポンサー収入。他にも大阪にあるeスポーツ施設内の運営受託なども実施。

eスポーツ事業で一番難しいのは、スポンサーを取ることです。 おそらく「eスポーツで事業をやりたい、起業したい」という人は 「強いチームをつくれば、スポンサーがいっぱいつく、お金が儲けられる」といったイメージだと思うんです。 でも、全然そんなことはありません。 むしろ強いチームでプロモーションできるのは、日本のトップレベルチームだけだと思います。

滋賀県唯一のプロeスポーツチームだとしても、スポンサーになってもらえるかは別の話。 始める段階から漠然とわかっていた部分ではあるものの、 運営をすればするほど、より実感しているそう。 しかし清水さんの場合、個人事業主からではなく、最初から法人としてのスタートです。

僕は、絶対に滋賀県の大きな企業がスポンサーについてくれると思っていたんです。 「eスポーツと教育」、しかもその教育は、ゲームを通して学びを与える、プログラミングを教えるといった部分にフォーカスする。 そこで必ず大きな企業さんとのつながりができる。 それならば、法人スタートしかない。スピード感を速めるため、最初から法人を選択しました。

「eスポーツ×教育」をコンセプトに掲げ、運営

個人的にも「eスポーツ×教育」は、ものすごく面白いと思っています。 実際、さまざまな場所に出向く中での反応はどうなのでしょうか。

「eスポーツは、なんとなく知っていたけれど、よく聞いたら面白いね」と言ってくれる企業さんもいます。 でも「大阪ならいいかもしれないけど、滋賀県でやっても」と言われるところも多いです。 反応はさまざまですが、その中でも、会社として教育や地方創生に力を入れている企業さんだと、かなりスムーズにお話が進んでいます。

教育だけでなく、競技面でも実績を残しているLAKE GAMING。 しかし、eスポーツの国体において全国優勝をしたからといって、企業からスポンサーの申し出がくるわけではないそう。

僕は、その部分をキャッシュポイントとしてほとんど考えていないんです。 あくまでメインのキャッシュポイントは、教育。そこで選手の活動サポートをする。 教育の部分があるおかげで、SDGsに力を入れている企業さんが興味を持ってくださって、スポンサーへのお申し出が増えています。

eスポーツイベントをきっかけに、子どもたちがみんなの前で活躍できる。 子どもたちに自信をつけるためにも、魅力的な機会です。 実際に「eスポーツ×教育」では、さまざまな場面に遭遇することも多いそう。

例えば学童施設への訪問ですね。 普段はあまり前に出るタイプではない子が、子どもたち同士のトーナメントで勝ち上がって、周りの子どもたちに応援されている。 周りで見ている先生も感動。応援されることが、実はその子にとって初めての経験ということもあります。 これは、そこまでお金をもらって行っている部分ではありません。 ただ、学童施設をはじめ、子どもたちと触れ合える活動は、今後も広げていきたいと思っています。

5年後、2027年。「eスポーツ×教育」を確立させたい

僕が一番実現したい部分は、eスポーツでの教育という分野の確立。 全国的に見ても、例がなく、今「eスポーツ×教育」を調べると僕が出てくるんです。 第一人者と言うとおこがましいですが、まずはこの分野を確立させたいというのが一番ですね。 僕がやるとなれば、滋賀県が舞台になります。 滋賀県で確立させることによって、滋賀県でのロールモデルが全国に広がる。 段階を踏み、実現に向けて事業を進めていきたいです。

前編ではenRargeの事業やこれから目指す未来の方向性をお伺いしてきました。 後編では、前例のない挑戦して良かったことや地方で起業を目指すメリットをお届けします。

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