header logo

TimeLab

株式会社タイムラボ

保積 雄介

自分が心の底から解決したいと思える課題。
選んだのは時間という事業領域。

今回お話をお伺いしたのは、時間ロスの課題をテクノロジーの力で解決することをミッションに掲げる、株式会社タイムラボ代表の保積雄介さん。 「時間」に注目した理由や今後のビジョンについてお話を聞いてきました。

「TimeLab」を使い、時間の分散化の課題を解決

“時間”をテーマとする、株式会社タイムラボでは、時間のムダやロスをなくすため、「TimeLab」のサービスを作成。代表を務める保積さんの自宅は、滋賀県大津市にありますが、チームは基本的にフルリモート。 滋賀から世界に向けたプロダクトを作成中です。 「時間」に注目したプロダクトを始めるきっかけは何だったのでしょうか。

今、副業する人が増えています。これまでの「働く」は、ひとつの会社に勤めるイメージ。ただ、今後は、複数の企業に所属する働き方、パラレルワークのような働き方の流れが加速するだろうなと。 僕も起業し、さらに他の会社も手伝っています。ここで課題となるのが、時間管理の難しさ。 副業先の会社の予定、自分の会社の予定、プライベートなど、それぞれアカウントを使い分ける必要があります。例えるなら、スケジュール帳を複数使い分けるイメージです。

予定を問われる度に、複数のスケジュール帳を確認しなければならない。 こう考えると、かなりの手間です。また、ダブルブッキングが起こる可能性も高くなります。 働き方が多様化することで、時間管理はさらに複雑化する。この問題を保積さんは「時間の分散化の課題」と名づけています。

今、僕たちが提供しているサービスでは、Googleカレンダーのアカウント、MicrosoftのteamsやOutlookのカレンダーのアカウントなど、全てを集約することができます。 「TimeLab」上から、すべての自分の時間を一元管理できるサービスをつくっています。

起業の軸となった「個人」「組織」と時間の原体験

2017年末、会社を退職した保積さん。自宅を買ったばかりで、3人のお子さんを育てているタイミング。 「起業しよう」とは決めていたものの、何をやるか、まだ決まっていない状態でした。 ただ、ひとつ軸として持っていたのは、「自分が心の底から解決したいと思える課題であり、情熱的に、熱狂的に取り組めるもの」ということ。

いろいろなテーマを探す中で、腑に落ちたのは「時間」です。出産予定の1ヵ月ほど前に、病院から電話があり、2人目の長男の死産を告げられました。 対面したのは、動かない赤ちゃん。このとき、初めて身近な人の死に直面しました。 赤ちゃんを抱きながら、親として、自分の命や時間を、この子に分け与えてあげたいと思いました。でも、そんなことはできません。そのとき、時間は有限だと強烈に意識しました。 僕にはまだ時間がある、ムダにしたらダメだと感じた原体験のひとつです。

組織にも「時間」の課題は当てはまります。保積さんが「DeNA Games Osaka」で働いていた際には、リクルートと共同で面白い実験をしていました。 1週間、首から端末をぶら下げ、声を録音。会話の内容は録音しませんが、話した相手や場所、時間をトラッキングし、可視化する実験です。

その結果、15分以上の会話が、業務時間の50%以上を占めていることがわかりました。 ゲームの開発部隊のため、エンジニアが3割、デザイナーなどのクリエイター系が3割、ビジネスやプランナー系が3割、合計9割はゲームを作る開発運用のメンバー。 可視化して初めて、多くの時間が、コードを書いたりデザインをしたりする時間に充てられていないことがわかりました。

もちろん、会話の中には必要なミーティングもあります。ただ、保積さん自身が把握していなかったことも事実。 今回可視化し、初めて浮き彫りになった課題。そこで、社内のミーティングのリストアップを依頼し、仕分けした上で不必要なものを辞めることに。

これらが「個人の時間をうまく使えていない」「組織が時間を使いこなせていない」という原体験です。 でも、うまく時間を使うことができれば、個人、会社、組織、すべて生産性が上がってムダな時間が減り、みんながハッピーになる。 自分ごとであり、僕がやる意味があると思い、事業化を目指したことが最初のきっかけです。

経験とスキルを身につけた上での、35歳の起業

35歳で起業した保積さん。最初からスタートアップか、受託から始めるか、自身のキャリアについて迷うことはあったのでしょうか。

もちろん、迷いはありました。キャッシュアウトしてお金がなくなったらヤバイですから。ただ、35歳の起業は、決して早いわけではありません。 自分やチーム数名を食べさせる位は、いつでも稼げるくらいの経験とスキルを身につけているからこそ、起業しているわけです。 ヤバくなったら、仕事をすればいいとの考えは常にあります。だから過剰に心配するようなことはありませんでした。

まず、保積さんが最初に取り組んだのは、時間のトラッキングです。 自分が何に時間を使ったかを可視化するサービスですが、可視化するだけで終わってしまっては、改善には結びつきません。 また、保積さんの共同創業者は、ヘルスケアスタートアップ「FiNC」出身です。 仕事の集中力やパフォーマンスを測るデータと、トラッキングの作業データを組み合わせ、最適な力を発揮する時間帯や作業の可視化を視野に入れていました。

経営者としては、得意なことを得意な人に依頼できればいいわけです。 科学的なマネジメントができるソリューションが欲しい。ハードウェアを組み合わせたビジネスを目指していました。 中国の深センにも行き、デバイスを作る価格も調査しました。ただ、やめた理由は、ビジネスとしての難易度の高さです。 ハードウェアスタートアップは、普及も必要。コストの面でも採算が合わないため、「面白いけど、今じゃない」と、判断しました。

目指すユーザー体験は、自分の時間のコントロール

さらに「TimeLab」のひとつ前に手がけていたのは、日程調整サービスでした。日程調整のURLを相手に送り、相手がリンクをタップすると自分のカレンダーの空き予定が表示される。 相手が空き時間の中からタップすると、アポが埋まる仕組みです。

2020年ぐらいに作り、クローズドベータで使ってもらいました。 プロダクトとしてリリースすることもできましたが、結局世の中には出していません。 理由は、僕たちがやりたいユーザー体験ではなかったから。

相手は、カレンダーの空き予定が全部出ている中から、タップして予定を入れることができます。 とても便利な仕組みに思えますが、1時間のミーティング(予定あり)の直後に予定が入ることも考えられます。 ミーティングの内容や相手によっては、終わりが延びる可能性もあります。「この時間帯には、予定を入れたくなかった」と思うケースもあるでしょう。

僕は、自分の時間をコントロールすることが、時間をうまく使うことだと思っています。つまり、その体験は、真逆です。 当社としては、そのサービスを良しとできないと思い、辞めました。 当時作っていたプロダクトは、現在一般化しているサービスと、遜色ない機能がありました。日程調整も可能です。 体験としては違うと判断しましたが、この経験を踏まえ、今のプロダクトに調整機能がついた経緯もあります。

【時間のデザイン体験】サービスのアップデートを目指す

多くの人が「お金は大事」と認識しています。個人なら家計簿をつけ、会社なら事業計画を作ります。 しかし、時間は重要視していない人が多いのではないでしょうか。しかし、時間は、増やす手段もありません。有限であり、希少性も高いです。

時間もお金と同じように、デザインし、予実管理することを当たり前にやれば、うまく使えるというのが僕の仮説です。 そういった体験ができるようなサービスを、今後の機能としてもアップデートしていきたい。これが中長期的な目標です。 最終的には、「TimeLab」を使えば、すべての自分の時間をうまくコントロールできるようなソリューションにしたいです。自分の人生を、自分が費やしたい所に費やす。 当たり前の世の中に、そして子どもたちも当たり前に使えるソリューションになればいいなと思っています。 TimeLabサービスページ

後編を見る

Youtubeで見る