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MYNET

株式会社マイネット

上原仁

地方の若手起業家に伝える
「全国大会に出ろ」の言葉の意味。

前編に引き続き、株式会社マイネットの上原仁さんにお話を伺いました。

後編では、上原さんのよりパーソナルな部分や起業を目指す次世代の方へのメッセージをお届けします。

小学5年生で“起業”を意識。NTT入社で世界観が変わる。

小学5年生の上原さんの将来の夢は「起業」。

松下幸之助さんの伝記を読み、起業して松下幸之助さんのような立派な経営者になることを決意したそう。 特に刺さった言葉は「松下電器は人をつくる会社です。あわせて電気製品をつくっています」

もう、むちゃくちゃカッコいい。

僕もこんな立派な人になりたいと思いました。 マイネットの経営方針の第一に置いているのも「人を大切にする会社」。松下幸之助さんの言葉「人をつくる会社」と直結しています。

中学、高校時代も「自ら起業して経営者になること」ありきだったという上原さん。

中学生になり初めて買った本は、『リーダーになったらこの本―管理者としてなすべき228のチェックポイント』。大企業の課長が読むような本です。そして将来を逆算。

関西で経営学を学ぶなら、神戸大学だなと。

神戸大学に行くなら、膳所高校。膳所校に行くためには、中学校で上位10人以内。5教科450点をとるために必要な勉強量を考えました。

起業のかたちは、地域に根付くスモールビジネスから、上場企業を目指すモデルまでさまざま。

実際に、上原さんが具体的なビジネスイメージを抱いたのは、就職の時期だといいます。

学生時代は、学生ベンチャー、ベンチャー企業に勤めていました。30人ぐらいのチームで、年商3億円ぐらいのトップを経験。

ただ、この規模感と社会にインパクトを与えられる規模感は違うと感じていました。

本当の意味で上原さんが違いを実感したのは、NTT入社後。

毎日、当たり前のように自分が勤めている会社が日経新聞の1面や3面を飾っている。扱っている商材や取引相手との取り組みが社会に影響を及ぼしている状況。 さらにNTTは国の視座です。 日本の重要事項である通信部分を、自分たちの意思決定1つで変化させていく世界観は、これまでにない体感だったといいます。

10兆円規模感の企業だからこそ、自分たちの計算式が0.1%ずれるだけでも、事業者との取引額が数千億円変わります。

そんな世界観を体感したことは、私の考え方に大きな影響を与えてくれました。 社会に影響を与えるには、ある程度大きな規模が必要なんだなと。

全国大会に出よう。自分の視座を知ろう。

東京や大阪だけでなく、滋賀県をはじめとした地方にもスタートアップの流れは生まれています。

しかし「何かを始めたいなら、まずは東京へ」というのが上原さんの考え方。

私がよく使う言葉は「全国大会に出よう」です。

ひとつの県の中に収まって仕事をしていると、市場の見方、取引先の捉え方、顧客市場自体を「県」という単位で見てしまう。 でも、東京、いわゆる全国大会に行くと、全国に向けたサービス提供や日本で一番の特徴を持っていなければ勝てないことが前提の頭で戦うことになるわけです。 この視座を持っている人たち同士、スタートアッパー同士でのコミュニティは、切磋琢磨しながら視座を高め合う状態になります。 だからこそ起業家が成長する上で、一番大事なものは、全国向け、グローバルサービスを本気で取り組んでいる人たち同士のコミュニティだと思っています。

例えば、滋賀県に拠点を置きながら成長の加速度を高めたいと思った場合。

滋賀県に拠点を置くことが強みになるのは、ほかの場所では得られないようなブランド価値を得られるケースだといいます。 ブランド価値とは、基本的に信用、歴史、文化であり、何百年の単位で育んでいるようなものが根ざしている状態。

例えば、忍者ビジネスなら、甲賀でやる理由はあると思います。

信楽焼は信楽でやる理由、西陣織のビジネスなら、京都でやる理由がある。 各エリアの歴史や文化を身にまとっているものをブランド価値とし、競争力を高めサービスを提供する場合は、そのエリアにいることに価値があると思います。 ただ、ほとんどの場合、後付けの理由になっていることが多いですね。

現在、上原さんからスタートアップの子たちへのアドバイスは、10社中9社「東京に行っておいで」という結論になっています。

全国大会に出た上で、自分の視座がどのあたりにあるかを知る。その上で、東京に居続けるか地元に戻るかを選べばいい、と。

まずは自分の目で確かめて、平衡感覚をとらえる必要があります。

本中、世界に向けて、日本で一番のプロダクトをつくる、サービスを提供することの視座を知った上で取り組む。この順番で考えたらいいんじゃないかと思います。

滋賀県守山市出身。現役世代。

東京証券取引所市場第一部上場企業代表取締役の上原さん。全国大会決勝まで行った人が、滋賀県に戻ってくる。 滋賀県の起業家にとって、自分のビジネスに関してもよりリアルに感じられる気がします。

私が東京に行ってから2022年でちょうど20年です。20年、全国大会で勝負した自負はあります。

ここで次に何をやるかを考えたとき、東京の勝負の仕方、資本市場へのアクセスの仕方などを、地元・滋賀県に持ち帰るようなことをするのは、アリだと思っています。

今、各都道府県に数名、代表的なUターン成功起業家が出始めています。

例えば、新潟県ならフラー株式会社の創業者・渋谷修太さん。それぞれの県にとって、地元にとって、とても大事なことです。

ただ、今この記事をご覧になっている方の多くは、起業家ないしこれから起業するという方だと思います。

その方々には、できれば本気で全国大会を戦って、優勝する。すなわち日本一になって、上場なら上場、本当の成功にたどりつくということにフォーカスしてほしいです。 そこまでフォーカスして、やっとベスト8で地元に帰ってくる、それぐらいになる話だと思っていた方がいいです。

今の時点から「上原さんみたいに、地元に帰って活躍する人もいるじゃないか」とは、考えない方がいいということですね。

はい。甘えようと思ったら、いくらでも甘えられる。

でも、甘えずにちゃんと全国で勝つ。絶対に全国制覇するという感じでやる。 そこまでやって戻ってきてこそ、初めて地元に価値を返すことができるんだと思います。

起業家の集まるまち守山市への思い

守山市に対しては、何より自分自身を育んでくれたことへの感謝の思いがあります。

最近の50年でいうと、守山は新興住宅地。この新興のゆりかごのおかげで、私の価値観を育んでもらえたと思っています。 だからこそ、守山市に対して恩返しをしたい。 私にできることは、起業という軸のところで、守山市、守山に関わる人たちに起業のあり方をお伝えしていくことだと思っています。

起業にはスタートアップないし上場を目指す、極度成長というスタートアップのあり方と、地元に根ざして地域に貢献するスモールビジネスのあり方が存在します。

スタートアップ、スモールビジネス、どちらも尊いものです。

先ほど私が話していた全国大会論は、あくまで「スタートアップとしてやっていきたい」と考える人向けの話です。 資本市場と接続し、エクイティマネーで、一度数年間赤字を掘ったとしても、大きな価値、持続する価値を生み出すチャレンジができる。 昔なら、大企業の研究開発部が担っていたようなところを、資本市場と起業家の力で行うことができる時代になっています。 思いを持って突き抜けたいという起業家にとっては1つ、すごく大きな選択肢。この方法を選ぶ人に、その選択肢があることをしっかり伝えていきたい。

資本市場には何百兆円というお金が流れ、さまざまなスタートアップに投資が行われています。

調達したからには、最終的にお返しすることは責務です。ただ、資金をつくることばかりに必死になっていては、社会的価値を生み出す当初の目的を忘れかねません。

それよりも、資本市場に直接接続をしてお金を調達する。

そのお金で、本来自分が生み出したかった価値を、社会に対して生み出していく。 この選択肢は、どんな場所に生まれた人にも開かれているんだということはすごく伝えたいです。 私自身、そのための資本市場との接続自体を、守山、滋賀県の起業家の人たちに提供していきたいという気持ちを持っています。

現在ひと月の6割は滋賀県守山市か大津市で過ごしている上原さん。

僕たちも、今、リアル、オンラインを含めたコミュニティをつくっています。 資本市場との接続部分に関しては、仁さんの協力を仰ぎつつ、滋賀県から全国大会に出ていく起業家をサポートできるよう、僕たちも頑張っていきたいと思います。

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