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スタートアップ×上場企業×行政の掛け合わせから生み出された実証実験。「守山市健康起業プログラム」レポート

公開日:2023年10月12日

スタートアップが事業を生み出す時に念頭におくもの。それは課題がビジネスモデルとして落とし込めるかです。

ただ実績がない事業をいきなり落とし込むのは難しい。そうなったときに行われることの1つが実証実験です。

自治体側とスタートアップが連携して行われる実証実験。

今回その実証実験をスタートアップと本市のみではなく、上場企業も掛け合わせた形で実施しました。

プログラムの名称は「守山市健康起業プログラム」。

その全貌をレポートとして紹介します。

「起業家の健康ストレスはどれぐらい?」滋賀大発ベンチャー「イヴケア」、「ユーグレナ」と守山市が連携して行ったプログラムとは。

今回実証実験がスタートした経緯としては、守山市が地方創生の取り組み「起業家の集まるまち 守山」で行った繋がりから生まれました。

イヴケアは、五十棲社長への起業家取材。

ユーグレナは、2022年、立命館守山で開催した「びわ湖サスティナブルスタートアップDAY」で出雲社長に登壇いただいたことから。

この繋がりから広がり「起業家のストレス等の健康面を可視化、実態を把握し、サポートすることで健康的な起業(経営)機会の創出に繋げられないか」という観点で今回のプログラムを実施しました。

プログラム内容は大きく分けて3つ。
1つが最先端ヘルスチェックサービス2種による健康面の可視化。
そして期間中におけるサプリメントの摂取。さらには結果を踏まえた上でのワークショップの実施。

本プログラムを通して、起業家の健康面のサポート可能性を探りました。

毛髪、尿検査による診断で健康状況を可視化する。

今回実証実験を行う上で必要となるのが、検査の受診、サプリメントの摂取、ワークショップへの参加をする起業家の存在。
協力いただいたのは守山市の若手起業家の集まり「守山商工会議所 青年部」でした。

事前に守山市から声がけを行い、参加者を募った結果、18名の参加となりました。

しかも参加するのは、起業家だけではなく、守山市を運営する「経営者」という側面から守山市の森中市長も参加。

キックオフとなる記者会見では、ユーグレナの出雲社長も参加いただき、記者会見を実施しました。

当日の記者会見ではその場で髪の毛を切るというパフォーマンスも。

今回2つの最先端ヘルスチェックサービスを参加者は受診。1つが、起業家のストレス診断。どれだけストレスを感じていたか、また将来に向けたストレスの抵抗力の診断を行うものです。

こちらは、イヴケアの技術を活かしたサービス。

もう1つが、尿検査による栄養診断。こちらはユーグレナが提供するもので、尿をかけた検査キットをスマートフォンの専用アプリで撮影すると、約2分という短さで栄養バランスをチェックすることができるというもの。

また、ユーグレナは睡眠の質・ストレスに対してWで働く機能性表示食品のサプリメントを参加者へ提供し、期間中参加者に尿検査を2回受診いただくことで、健康状態の変化を確認しました。

ストレス・栄養面の可視化から、サポートまでを行い、プログラムの締めくくりとして行ったのは「ストレスに対しての理解を深める」ワークショップ。

起業家同士で、可視化されたストレスをネタに話し合う。

ワークショップでは、実際の結果を元に、イヴケアによる結果説明会を実施。

ストレスと一口に言われても、どういうものがストレスになるのか、平均は?などを専門家から聞き、その上で、守山の起業家たちがどうだったのかを説明しました。

森中市長も参加。実証実験に首長自ら参加し、体感するのが守山らしさです。

さらにワークショップではそれぞれ出たストレス診断から「他の人はどうだったのか?」「自分が思っている以上に低かった」「ストレスに対する対策はなにをしているのか」などを話し合う場に。

普段から地域事業にも関わっている商工会議所の青年部メンバーだからこそ、より深い話もでき終始実りのある情報交換を行うことができました。

新たなビジネスの種に。「実証実験を通して見えた新たな事業スタイル」

今回の実証実験には大きく2つの役割があります。

1つが起業家の集まるまち 守山として、市内で事業を行う起業家のストレス・健康面のサポートの可能性を探り、これからの持続的な事業成長に励んでいただくこと。

そしてもう1つが、官民連携を通した実証実験を行い新たなビジネスの種を作ることです。

実際にこの実証実験を通して、最終的にイヴケア社の五十棲社長からのコメントです。

今回の連携プログラムは、我々にとって大変挑戦的な内容でした。 これまで、当社では通常働いておられる一般社員の方々を対象にサービスを提供してきましたが、経営者のデータを一度に分析することはなかったため、どのような結果になるのか、またフィードバック・ワークショップ会ではどのような意見が飛び交うのか、実施する我々はドキドキでした。

しかし、そんな不安を吹き飛ばすように、当日のフィードバック会では、経営者同士が真剣に、あるいは誇らしげに、楽しくご自身のデータを共有し合っている姿を拝見させていただき、きっと経営者の皆様の中に、「心との向き合い方」についての新しい視点が生まれたのではないと確信を得ました。

そして、プログラムの最後に、「自分の会社でもやりたい!」という声をいただき、まずは経営者自身の試していただくことが、我々のような健康経営を支援する新しいサービスを広げていくために大変重要なことであるという気付きをいただきました。今回のプログラムの経験を活かして、地方の商工会等と連携した、経営者へのお試しパッケージを展開していきたいと考えています。

今回の実証は、実施自治体の社会課題解決意識をきっかけに、「心」と「身体」のヘルスチェックという各社が別々に持つ強み・テクノロジーを存分に活かすことのできた非常に貴重なモデルケースであると思います。このようなプログラムに参加できたことを、地域貢献型のベンチャー企業として改めて嬉しく思います。

ユーグレナ社からも統括コメントとして下記を頂きました。

テクノロジーの進化により、ヘルスチェックサービスも成長してきていますが、効果的にコラボレーションすることで、単なる個人の健康という域をこえて、経営・スタートアップを支援するということが可能である、という片鱗を感じられる実証ができ、貴重な機会であったと考えています。特に、参加者の方々の体調について、過去の状態から今のリアルの状態までを把握することが実現できており、参加者の方がご自身の体に関してさまざまな気付きを得られたことで、我々が目指す健康寿命の延伸の実現に一歩近づくことを実感できました。

実際に参加された方々のスコア変化は様々でしたが、多くの方では改善が見られておりました。
ておりました。特に、数日後に受けて頂き3~4の項目で改善がみられた方もいらっしゃいましたので、生活習慣の改善が目に見える形になったのではないかと思いますので、今回実際に取り組まれた内容を継続して頂ければと思います。

今回の実証は、イヴケア社とユーグレナ社が効果的にコラボレーションし、官民連携の経営支援としてヘルスチェックサービスを組み合わせて提供できたことは国内初ではないでしょうか。最新テクノロジーを活用し、それらを組み合わせることで新しい体験が生み出せることを示すことができました。今後、本プログラムが守山市からはじまり、全国が参考になる健康施策におけるモデルケースの1つとして認知してもらえれば幸いです。

森中市長コメント:守山を「実証実験のフィールド」に!

今回の実証実験に関わり続けた森中市長。
官民連携の実証実験を通して、どのように感じたのかコメントいただきました。

かつては、大きなシェアを有する大企業が用意するシステムやパッケージを導入・購入していれば、たいていの社会課題は解決する、そんな時代でした。
しかし今は、個人の価値観が多様化し、技術の陳腐化が早くなるなか、社会課題の解決のためには多彩なスタートアップ企業等が提供する新しい技術・新しいサービスを取り入れることが必要になっています。
そして、新技術・サービスを社会実装するためには、多くの場合、実証実験が必要となりますが、そこに壁となって立ちはだかるのが、「規制の壁」「行政の壁」です。
「日本がこの先も世界で戦っていけるために」
また、そこまで大上段に構えなくても、
「社会に役立つ新技術・サービスをいち早く社会実装するために」
市街地や田園や豊かな自然もあり、京阪神からのアクセスが良く、行政の対応も小回りが利く、ここ守山を「実証実験のフィールド」として大いに活用してもらいたい。
そんな風に思っています。
そして、守山でスタートアップだけでなく、上場企業や地元事業者が連携していくなかで、地域経済の活性化にもつなげていきたい、と思っています。

今回、私が自ら参加したのも、市長自らスタートアップとの連携の姿勢を示し、新しい技術を積極的に受け入れるまちのイメージをアピールしたい、ということもありました。


実証の結果は、毛髪によるストレスバイタリティチェックは、平均よりストレス反応は強い(多くのストレスを受けている)一方、抗ストレス反応は平均程度(ストレス反応に及んでいない)という結果でした。

私(市長)は実証前の記者会見で「楽観主義なのでストレスには強い方だと思う」と述べましたが、実証結果は、ストレスに抗ストレスが及んでいない=レジリエンスが低い、という状態ということがわかりました。
この実証結果を踏まえ、自身のストレス耐性を過信せず、リラックスする時間を多く取ることや、ストレスを感じたら早めに周りに相談することなどを意識していこうと思い至ることができました。こうした「経営者」が抱える課題の解決を科学的に、新技術でサポートする。
そんなビジネスが生まれてくる。自治体側での課題解決、民間側でのビジネスを生み出す仕組みづくり。そこを回していきたいです。

ちなみに尿検査結果は、9月21日に行った検査では総合判定37点が、10月10日に行った検査では総合判定46点に改善していました(ユーグレナのサプリメントをこの間飲み続けていた効果がこんなにも直ぐに!?)。

繋がりから新たな官民連携を。守山市を実証実験のフィールドにしていく。

今回の取り組みでは、スタートアップと守山市だけではなくユーグレナという上場企業が実証実験に加わることで、事業の底上げさらにメディアへの掲載価値が高まりました。

実際に記者会見後には地域メディアを中心にテレビ、新聞、Webといった複数のメディアで報じられる結果に。

課題を解決することだけではなく、新たな方向性を見出し、それが世の中の流れに乗る=知られることにつながる1つの官民連携モデルを行うことができました。

繋がりから作る新たな官民連携モデル。

こうした守山市をフィールドとする、実証実験・チャレンジを今後も受け入れ応援していきます。引き続きご注目ください。