今回お話をお伺いしたのは、株式会社ニューハイツ代表取締役の長谷川直輝さん。
会社設立の経緯や、滋賀で行うモチベーション、今後のビジョンなど、気になる話をお届けします。サッカー少年がニューハイツ創業を決めるまで
小学生から高校生までの12年間サッカーをしていた長谷川さん。
競技自体も好きだったそうですが、特にウェアやスパイクなど身に着けるものへの関心が高かったそう。友達や先輩が使わなくなったウェアやスパイクを貰った後にしていたのは、解体でした。
サイズが合うスパイクは、もちろん履いていましたよ。
でも、見ているだけでも面白い。メーカーごとに、つくり方や素材の選定も違いますから。当時から、将来は自分のスポーツメーカーをつくりたいと思っていました。

地元の高校卒業後、東京にある服飾の専門学校に入学。
卒業後すぐに会社を設立したかったものの、型紙をつくって縫うことはできても、このままでは個人製作で終わってしまうと危惧した長谷川さん。
“会社”としての作り方を知るため、スポーツウェアメーカーやアウトドアメーカーの生産を担当しているOEM会社に就職しました。
3年間、営業や生産管理などを担当し、ひと通り理解しました。
アパレル関係であれば、東京で開業した方が動きやすい。でも、絶対地元でやりたかった。サラリーマンとして働きながら、休日は滋賀に戻り、地元の金融公庫に相談。
会社設立前に、個人で融資を受けつつ準備を進めていました。
滋賀県が持つポテンシャルに期待
2022年3月時点、滋賀県には、Jリーグクラブがありません。
バスケは、B.LEAGUE所属の「滋賀レイクスターズ」がありますが、他の都道府県と比べると、スポーツに熱狂的とは言い難い状態です。
長谷川さんの中で、滋賀県にどのようなポテンシャルを感じているのでしょうか。
今、村田和哉さんが「ヴィアベンテン滋賀」の立ち上げに向けて動かれています。
まず、サッカーのムーブメントが徐々にできあがるはず。村田さんなら本当に実現してくれそうです。僕もサッカーをずっとやっていた立場として、一緒にスポーツを盛り上げていけたらと思っています。

もうひとつ、長谷川さんが描いている夢は「滋賀の子どもたちに、新しいスポーツの文化をつくること」。
まだ、夢の段階ですが、自社製品・運動場・ジムなどがひとつにまとまった複合施設などをつくりたい。
びわ湖、滋賀は、ポテンシャルを秘めている場所だと思います。日本のど真ん中でアクセスもしやすい。琵琶湖でマリンスポーツをしたり、山ではトレラン・ウィンタースポーツも楽しめる。
周辺ではランニング、自転車(ビワイチ)などいろいろなスポーツが盛んな場所。
地の利も生かしつつ、もっと盛り上げていければと思っています。
日本一のスポーツメーカーを目指す
自身のスポーツウェアブランドをつくる目標をすでに達成した長谷川さん。
スポーツの文化をつくるまでに叶えたい、中間地点の目標についてもたずねてみました。目指しているのは、日本一のスポーツメーカーです。
そして、ゆくゆくは、世界的なスポーツメーカーになる。
そのために、これからどうしていくかを常に考えています。

同時に、現在のアパレル業界がうたう「サスティナビリティ」にも疑問を感じる点があるそう。
再生繊維を使えばサスティナビリティかといえば、少し違うのではないか。ひとつのものを長く使えるような仕組みを作り、いい循環を生み出したい。
その思いを落とし込んだ先に、ニューハイツの商品が生まれています。
例えばニューハイツの高機能フェイスマスクのコンセプトは、
365日毎日使って洗っても、シワ・形崩れを起こさないこと。
素材にもこだわり、チープ、使い捨てと相反する方向性に特化。
各メーカー、スポーツマスクも販売していますが、呼吸のしやすさにフォーカスしている製品が多いんです。
飛沫や花粉などのブロック機能は後回し。呼吸がしやすいマスクは、誰でもつくれる。飛沫やホコリ、花粉に対する機能を取り入れた製品をつくりたいと思い、実現したのが「高機能フェイスマスク」です。

すべての競技の基礎となる「ランニング」カテゴリ
オンラインショップに並ぶアイテムは、
マスクのほか、トレーニングパーカーやTシャツ、アンダーウェア、レギンスなど、種類が豊富です。長谷川さんの奥様は、専門学校時代の同級生であり、結婚前は、大手スポーツメーカーで水着のデザイナーをしていたそう。
会社設立と同時期に、セレクトショップなどを担当するマーケティング支援会社の出身者も
一緒に滋賀県に引っ張ることに成功しています。さらに今後の方向性についてもたずねてみました。
先日、ある経営者の方とお話をさせていただく機会があり、いろいろアドバイスをいただきました。
実際、いろいろやりたい思いはありますが、まずは、ニューハイツは、これだけ。この「だけ」のスタンスを取り入れ、ランニングカテゴリーに絞ろうとしています。
今はサンプルを作り、来シーズンに向けて動いている状態。
「ランニングのニューハイツ」を思われれば、まずは一歩前進。
その後、将来的には、カテゴリー別の展開を目指したいと思っています。
ランニング人口の多さや「走る」ことはすべての競技の基礎であること。
海外ではランニングが生活の一部として根付いているほどたくさんのランナーがいます。
私自身、ランニングをするので反映できることは多くある。
実際の需要、ランニングをより良く、もっとカッコ良くできる。

サイトのモデルさんからも、ハイブランドの印象を受けます。
値段は、他のスポーツウェアと比べ高い部類に入ると思います。
ただ、スポーツウェアは、他が安すぎるだけ。私たちは新興企業としてお客様から信頼を勝ち取る必要があります。
そのために品質や機能面に重きを置き、その中でブランドの特色を落とし込んでいきたいと思います。
ただ、価格面に関しては、今後徐々に見直す予定です。
ある特定の人だけが買える服にするわけにはいきません。
スポーツを楽しむ人々が、普通に働いて普通に買えるものにしていきたいと思います。
創業直後のピンチをマスク製造で乗り越える
15万枚以上を売り上げている高機能フェイスマスク。
スポーツウェア以外の分野ですが、なぜ製造に至ったのでしょうか。2019年11月に会社を設立し、12月、1月に東京や滋賀で展示会を開催しました。
しかし1月末、新型コロナウイルス感染症の問題が発生。受注分の生産に入るはずが、生地屋や縫製工場で感染が発生。
製造できないアイテムもあり、初オーダーで多くのお客様に返金しました。

想定していた売上にならず、手元の事業資金は残り数十万円に。
展示会に向けて作成したサンプルやフライヤー、都内のスペースレンタル代も全てが無駄に。そして銀行で新たに600万円ほどを借り入れることに。
この状況で服を作っても、また同じことになるなと思い、
当時各地で不足していた必需品のマスクを作ることにしました。ちょうど梅雨に入る時期で絶対普通のマスクだと蒸れるて不快になるなと。
スポーツウェアの知識がありますから、接触冷感、透湿性の生地など、組み合わせはある程度理解していました。
3回ほど試作品をつくった段階で、これはいけるなと思い、600万円ほぼ全部を注ぎ込み、初回でまず5万枚を製造。
5万枚つくり、まず新聞・ネット広告を打ったら1日で1,500万円ぐらい注文が入りました。

発注が続き、東急ハンズやその他のショップからの問い合わせも増加。
圧倒的にリピーターが多い商品で起業別注なども行っており、一連の流れが生み出せたことが、大きな出来事だといいます。2025年、全国各地の店頭でニューハイツの製品と出会える
3年後の2025年、ニューハイツとして描くビジョンについてたずねてみました。
日本全国どこでも、店頭でニューハイツの製品を見ることができる状態にしたいです。
先日、あるスポーツ量販店と契約を交わすことができました。まだニューハイツというブランドを知らない人が多いので実際に製品を見ていただく場を全国に増やしていきたいと思っています。
良い製品を探しているお客様にニューハイツのことを知ってもらい、新たなスポーツウェアの選択肢を提供することが目的です。
そのほかランニング専門店やスポーツ用品店との取引先は徐々に増えていますが、まだまだ少ないです。
その辺りも整備しながら、まずは日本全国どこでも弊社の製品が見られるようにしていきたいと思っています。
前編ではNew Heights.の事業やこれから目指す未来の方向性をお伺いしてきました。
後編では、長谷川さんの経験談や起業を目指す次世代の方へのメッセージをお届けします。